築後100年以上を経過した吉田寮現棟は耐震性を著しく欠き、大地震が発生した場合には倒壊あるいは大破のおそれがあるにもかかわらず本学学生が居住しているという、極めて危険な現状にある。
本学はすでに昭和50年代から吉田寮現棟の危険な状態を認識し、昭和57年には昭和61年3月を在寮期限とする決定を行い、平成元年までの間、寮生の安全確保を実現しようと吉田寮生との話し合いに努めたが、吉田寮現棟の建物の本格的な改善整備は果たされないまま、老朽化が進んだ。
そして、平成21年に「吉田南最南部地区整備・基本方針(案)」で旧食堂を取り壊して新棟を建設した後に現棟を建て替える方針を示し、新棟の建設は平成27年に実現したが、現棟の老朽化問題は未解決のまま残された。
そこで本学は平成27年7月に、危険な現棟に居住する学生がこれ以上増えることを避けるため、吉田寮自治会に対して入寮募集の停止を要請した。さらに、同様の入寮募集停止の要請を現在まで5回にわたって通知してきた。しかし、吉田寮自治会はこの要請にもかかわらず新しい入寮者を入舎させ、平成27年7月に約180人であった在寮生の数は増加し続け、平成29年11月には新棟を含む吉田寮の総収容定員(241人)を超える272人にまで達している。
このような経緯を踏まえると、また、大地震がいつ起こってもおかしくないことを考えると、吉田寮現棟に学生を居住させ続けることはもはや許されず、可能な限り早急に学生の安全確保を実現することは、学生に良好な修学環境を提供する責務を負う本学にとって最重要かつ喫緊の課題の一つである。
この課題の解決のため、京都大学は以下の基本方針を定める。
(1)平成30年1月以降、吉田寮への新規入寮は認めない。
(2)平成30年9月末日までに、現在吉田寮に入舎しているすべての学生は退舎しなければならない。
(3)退舎にあたって、平成30年4月時点で本学正規学生の学籍を有する吉田寮生については、希望する者に本学が代替宿舎を用意し、その代替宿舎に現在の寄宿料で居住させる。ただし、代替宿舎での光熱水費については、使用者である寮生の負担とする。また、代替宿舎での居住の終期は、原則として、当該寮生の正規生としての学籍の修業年限(大学院生については標準修業年限)の終期とする。
(4)吉田寮現棟の老朽化対策については、本学学生の福利厚生の一層の充実のために収容定員の増加を念頭に置きつつ、検討を進める。
平成29年12月19日
京都大学