「京都大学に吉田寮生との対話再開と吉田寮の緊急補修などを求める 市民と元寮生の集会」で確認した申し入れ書を7月10日に京大に提出しました
申し入れ書
2024年7月10日
京都大学総長 湊 長博 殿
教育学生入試担当理事・副学長 國府 寛司 殿
21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会
吉田寮に心を寄せる市民・学生有志
私たちは、京都大学吉田寮の卒寮生でつくる「21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会」の会員と、2024年5月18日に開かれた「京都大学に吉田寮生との対話再開と吉田寮の緊急補修などを求める市民と元寮生の集会」に参加した市民・学生有志です。
私たちは、湊長博総長が京都大学のサイトに掲載した「総長メッセージ」で京大の教育の伝統として記した「自らに課題を課し自学自習によりその解決に向け努力することを促すことによって学生の創造的精神の涵養をはかる」に賛同します。そして、その実践の場の一つとして学生寮があると考えています。
吉田寮では、1913年より111年間にわたって現在の地で学生が生活を共にしてきました。寮運営を大学との対話を重ねながら学生自らが担うことで、多くのことを学び自らの糧としてきました。現在そして将来においても、福利厚生と教育の場として、その存在は大きな意義があると考えております。さらにいえば、吉田寮現棟と食堂は木造現存最古の学生寮であるとともに、旧制第三高等学校の建物の一部を引き継ぐ京大最古の建造物の一つであり、文化財建造物としてかけがえのない価値を有しており、補修と保全は急務の課題となっております。
しかしながら貴大学は、これまで重ねてきた吉田寮自治会との話し合いを打ち切り、寮生に対して2019年4月に吉田寮現棟と食堂の明け渡しを求める訴訟を起こしました。大学と自治会が真摯な話し合いによって積み上げてきた合意を一方的に破棄して法的手段に訴えることは、学寮の意義を否定するだけでなく、学生を守り育てるという大学の責任を放棄するものであり、認められるものではありません。
京都地裁は今年2月16日に、居住する寮生14人について明け渡し請求を棄却する判決を出しました。そして、その判決の趣旨は、吉田寮自治会と京大との間で交わされた確約書が有効であったこと、吉田寮は寮自治会によって自主運営されてきた点に特長があるので代替宿舎(アパート)の提供では代替できないこと、吉田寮現棟は取り壊しが必要な状態とはいえないことなどを認めるものでした。にもかかわらず貴大学は「居住者に明け渡しを求めることが必要」として大阪高裁への控訴に踏み切りました。このことは大変遺憾です。
私たちは訴訟の取り下げと吉田寮自治会との話し合いの再開を大学に繰り返し求めてきました。京大教員有志は、昨年は訴訟の取り下げを求める要望書を、判決後には控訴の断念を求める声明文を湊総長に提出しています。吉田寮自治会が呼びかけた「訴訟の取り下げと話し合いの再開を求めるオンライン署名」には昨年12月の提出時に5800人の賛同が集まるなど、京都大学に方針転換を求める声は学内外で大きなものでした。それにもかかわらず控訴して学生を訴訟の場にとどめる姿勢には、疑問を抱かざるをえません。
貴大学に、吉田寮への対応について以下を申し入れます
一 京都大学が、吉田寮現棟・食堂の明け渡し請求訴訟を取り下げること
二 京都大学が、吉田寮自治会との話し合いを再開し、大学人の英知をもって問題解決への道を探る
こと
三 京都大学が、現棟補修が急務であることを大学として確認し、吉田寮自治会と連携しながら「吉田寮補修委員会」の設置などを進めるなど、早急に現状把握と対策を講じること
四 京都大学が、大学として吉田寮をどのように将来に引き継いで活用していくのかを検討し、学内外に広く表明していただくこと
京都大学は「基本理念」として「対話を根幹として自学自習を促し、卓越した知の継承と創造的精神の涵養につとめる」と定めています。対話が根幹です。世界と社会が揺らぎ、衝突が繰り返されているいまだからこそ、対話が求められています。貴大学が自ら範を示し、学生との対話を通じて、大学としての矜持を学内外に示していただくことを切に願います。
以上の申し入れに回答をいただきたく、よろしくお願いいたします。7月31日までに回答をいただけますでしょうか。申し入れの趣旨について湊総長と國府理事に説明をいたしたく、当会と市民・学生との面会の機会をいただくことも併せてお願い申し上げます。
以上