第7回連続公開学習会 「吉田寮と京大」学を開催しました

連続公開学習会「吉田寮と京大」学の第7回を、楽友会館とオンラインのハイブリッドで7月23日に開催しました。講師は、吉田寮の現棟と食堂の調査を手掛け、京大最古の木造建築物であることを突き止めた山根芳洋さん(七灯社、建築家)です。

山根さんは、2011年11月から実施した吉田寮の実測調査について説明されました。旧制第三高等中学校の創設時の寄宿舎の図面との照合や部材の状態などから、「時間的に古い印象」と感じていた食堂と便所など現棟の一部が寄宿舎から移築されたことを確認、「階段も切り分けて移設された」と指摘されました。吉田寮の床下調査の結果から、外からは見えない構造材も寄宿舎から転用されていると推定しています。

移設当時の責任者として、三高時代の寄宿舎から精通している工事管理者の山本治兵衛を紹介。「金がない中で再構成と再構築が行われた」と指摘、「現在から見れば(再構成は)面白いが、当時は当たり前だった」と指摘、「自分が作った建物を組み直したいと考えたのかも」とも推測されました。

また、集会所や道場などを含めた吉田寮のある吉田南地区の南西エリアが、東大路からのアプローチで大学と外をつなぐ役割があったことを指摘。楽友会館も含め、空間や景観、建築群としての意味や価値も指摘しました。

文化財としての吉田寮について、デザインや機能、築年数など「(指定文化財としての)要件は満たしている」とした上で、「指定文化財として指定するのは行政だが、文化が貼り付いていれば既に文化財」と強調。「活用するのが一番で、どう使うか、どこをどう直すかを考えないといけない」とし、「生きた文化を積み重ねていく、大胆なことをやったらいいのではないか」「何がなくなったら吉田寮でなくなるのか。吉田寮の価値とは何か」と問題提起しました。

質疑応答では、「建物が学生に与えた精神的なものは大きい」「指定によって時間が止まるものにはしたくないが、歴史的価値が寮への愛着になっており、切り離せない。どのように保つか難しい」などの意見が出されました。山根さんは「吉田寮にまつわる人々の思いを残していく」ことの大切さを指摘、「吉田寮はそれにふさわしい」としました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です