9月27日に提出予定です。連名を呼び掛けております。
「京都大学学生寄宿舎吉田寮の保全と活用」を求める卒寮生と市民の共同声明
私たちは吉田寮の卒寮生と市民です
私たちは京大吉田寮にかつて生活していたものと吉田寮に関心を寄せる市民です。京大が昨年12月19日に公表した「吉田寮生の安全確保についての基本方針」において吉田寮に入舎している全ての学生の退去を求めた9月30日を前に、山極寿一総長と川添信介理事に対して吉田寮の保全と活用を求める要望を共同声明として発表いたします。
吉田寮の現棟は京大の誇るべき財産です
まず私たちは、築100年以上を経過した吉田寮の現棟について、歴史的建造物としての保全と活用を求めます。老朽化し、耐震性を著しく欠くことについて異論はありませんが、現存最古の京大の建築物であり、旧制三高の寄宿舎の解体後の建材も一部引き継いでいる京大の誇るべき財産といえる建物であります。現棟の取り壊しは、日本の高等教育の歴史の「生き証人」ともいえる建造物が失われることになります。その価値は、「近代日本の歴史的建築資産としてかけがえのない存在である」として2015年に日本建築学会近畿支部と建築史学会からそれぞれ出された吉田寮の保全などを求める要望書からも明らかです。
木造寄宿舎の現代的な活用を求めます
吉田寮については、耐震補強をして一部を残すという案も、京大当局から提案されていた経緯もあります、しかし、先述の基本方針は、「吉田寮現棟の老朽化対策については、本学学生の福利厚生の一層の充実のために収容定員の増加を念頭に置きつつ、検討を進める」とするのみで、歴史的建造物としての活用について言及はありません。大学の国際化が進んでおりますが、日本の風土に根ざした木造寄宿舎の現代的な活用も、「千年の都」にある京大に求められていることではないでしょうか。
これまでも大学と学生は話し合いを重ねてきました
さらに、この間の京大当局による学生に対する対応について、私たちは懸念を強めております。吉田寮は開設当初より学生による自治が志向されていました。その精神は伝統的に引き継がれ、学生が自らを律して成長する場になっておりました。大学による一方的で強権的な処置は、京大が長年にわたって醸成してきた、自由闊達と自主自律の精神を損ないかねないと考えます。
かつても吉田寮を巡って大学と学生が対立する状況がいくたびもありました。しかしながら、双方が粘り強く対話を続けることで、困難な事態を打開してきました。老朽化を理由に設定された1986年3月末の「吉田寮在寮期限」について、解決に尽力された当時の総長の西島安則氏は、在寮期限設定に伴う措置の執行完了にあたっての所感(1989年7月7日、京大広報375号)で、「本学の学寮の歴史を振り返り、京都大学らしい解決方法を熟考した」として、当時の河合隼雄学生部長と吉田寮自治会が話し合いを重ね、吉田寮自治会との合意に基づき、「京都大学らしい学寮の歴史の中で意義ある一歩が踏み出されたものと私は信じる」と記述しています。
京大らしい解決を望みます
京大らしい解決とはどのようなものか、学外にいる私たちが示すものではありませんが、ぜひともいま一度お考えいただき、学生たちとの話し合いを通じて、西島氏が書き記した「問題の正しい解決」のために尽力していただくよう、心から望むところであります。
呼び掛け人 「21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会」理事一同 (卒寮年・学部) 奈倉道隆(1960年・医)、中尾芳治(1958年・文)、広原盛明(1961年・工)、亀岡哲也(1989年・文)、冨岡勝(1989年・教育)、盛田良治(1991年・文)、稲庭篤(1991年・理)